どうも。
うたたねこです。

飛雲展が終わってから10日ほど経ちました。やっと勉強した内容がまとまったので、今回と次回に分けて記事にしていきます。早いもので「墨象作品の作り方」の記事もこれで7つ目!

このブログの3周年に向けてちょこちょこと作業をしていますが、その1つとしてこれまでの「墨象作品の作り方」の記事を少し編集してみました。カテゴリも作ったのでぜひご覧ください。

前置きはこれくらいにして、そろそろ本編に入ります。まずは飛雲展を見て感じた作品傾向や技術的なことについて、過去作品を見ながらまとめていきますね。

①人の作品の見方


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まずは展覧会における作品の見方について。人の作品を見るときは、ただ見るだけではなくそこからネタを盗みましょう。最早盗むために行っていると言っても過言ではありません(笑)

展示作品の中には自分と似た作品もあれば、自分では手に負えないくらい方向性の異なる作品もあります。そういった作品をスルーせず、新たなネタとして吸収しなければなりません。

私の作品の中だと上の作品が他とは一線を画しています。ここまでくると墨象作品ではなく、もはや絵ですよね。作品の出来は別として、方向性としては一考する価値があります。

②読める作品、読めない作品


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墨象作品といえば、何と書いてあるのか読めない作品の方が多いですね。実際、入賞する墨象作品のほとんどが読めない作品です。私も他の方が書いた作品の題材はなかなか分かりません。

では読めない作品が読める作品より絶対に優れているのかといえば、それは違います。読める作品でも良い作品はたくさんありますし、今回の展覧会でも入賞している読める作品がありました。

過去作品だと上の2枚が読めますね。1枚目が「香」、2枚目が「象」です。それに加えて今年の宇野雪村賞展に出した作品は、多分誰でも読める作品でした。

「墨象作品」=「読めない作品」というイメージは私にもありますが、そこに固執しすぎる必要はありません。漢字の元の形を踏襲するのも1つの立派な技術なのです。

③流行りの造形


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No.185_waki[2]

展示作品を見ていると、2つのパーツに分かれている造形の作品がとても多いように感じました。今の墨象の流行りのようです。過去作品の中にも、2つのパーツの作品はたくさんあります。

上の2つの作品の内、上の作品は正に今年の飛雲展に出品したもの。このような造形では、2つのパーツでかなりかなりかなり大げさにサイズ差をつけた方がよいようです。

今年の飛雲展では賞を逃してしまいましたが、その敗因の1つがこれですね。自分としてはかなりサイズ差をつけたつもりでしたが、客観的に見るとまだまだ足りなかったようです…。

No.233b_thousand[3]

次に気づいたこととして、縦作品横作品ともに真ん中辺りに曲線を持って来る造形の作品が多かったですね。確かに書きやすい造形ではあります。でも目新しさという点で言うと…。

No.133b_tsuyu
No.151_akatsuki[4]

この他、頭が重い作品も多かったです。私はあまりやらない造形ですが、今回の飛雲展で寄託賞を取った2つの作品がどちらも頭が重い作品でした。

私自身もそう思いましたが、同じ系統の作品だと頭が重い作品の方が頭が軽い作品より第一印象では格好良いかもしれません。ということは展覧会向きなのでしょうか?

しかし、ただ頭が大きくて墨量が多ければよいわけではありません。そこには掠れも必要であり、紙からはみ出すくらい大きな動きも必要です。黒すぎるのも問題ですね。

上の2つの作品がどちらかというと頭が重い作品。特に下の作品はなかなかの成功例ですね。このような造形では下は軽くてよいのですが、上の重さを支える何かしらのパーツが必要です。

No.216_yuu[1]

黒い作品からすれば少数派ではありますが、白を活かした作品もたくさんありました。紙に墨を1滴落とすだけでも、上手くやれば究極の真っ白な作品になります。

私も白を活かした作品はあまり書きませんが…書けませんが、上の作品はそこそこ上手くいきました。如何にして意味のない余白をなくせるかが勝負となります。

④昔ながらの造形


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流行りの造形の話をしましたが、だからといって昔ながらの造形が悪いわけではありません。たとえ造形が多少古くとも、線質さえ良ければ高評価を得ることが可能です。

上の作品は本当に昔からある造形の作品。これも以前に展覧会に出したものですが、なかなかの高評価でした。線質だけでの勝負は難しいですが、決して戦えなくはありません。

次の項目で話しますが、展覧会だからといって必ずしも奇をてらうのがよいわけではないようです。入賞した作品を見ていると、結局は線質のよい正統派が強いですね。

⑤奇をてらった造形


122b_kawa[1]

淡墨で書いた上から普通の色の墨やネオカラーで書いた作品がいくつかありました。パッと見たときの印象が強くて面白いとは思いますが、淡墨の必要性が問われそうです。

過去作品だと上のような感じ。これは何となく淡墨を使いましたが、それだと淡墨はいらないと言われそう…。墨象は自由ですが、そこには何故それをするのかという明確な理由が必要です。

No.190b_kuni[3]

文を書いたのかと思われるくらい手数が多い作品もありのようです。手数が多い分だけ技術が必要ですが、そこさえ成功すればよい作品になるのではないでしょうか。

また、ここまで線が多いと線質だけでなく全体の流れも重要になります。始筆から終筆に向かって、まるでダンスを踊っているみたいな作品が書きたいですね。

私も数枚このような作品を書いたことがあります。上の作品は線質がイマイチなのが惜しいところ…。あとは墨量の変化も大切ですね。どこで滲ませるのかよく考えなくてはいけません。

No.195b_reiwa[1]

究極に奇をてらうのであれば、洋紙を使うという選択肢も。上の作品を見ると分かりますが、画仙紙と比べてかなり雰囲気が変わります。ただこれが良いかどうかは微妙なところ…。

⑥客観的視点の必要性


展覧会では自分の作品以上に、他の人の作品をたくさん見ました。その中にはいくつか自分でも書いたことがような造形の作品もありましたが、そこで気付いたことが1つ。

それは「客観的視点」の必要性です。自分で書いたときは格好良いと思っていても、同じことを他の人がやった作品を見て同じように格好良いと思えるかというと…残念ながら違いました。

123b_kawa[2]

まずはうたたねこが大好きなシンメトリー。墨象を始めた初期の初期からシンメトリーな造形は墨象作品にはなりにくいと言われていますが、確かにそうですね…。

上の作品も、自分で書いたものなので格好良いと思っています。でも実際はどうなのでしょうか。どうしてもシンメトリーをやりたいなら…墨量の変化がキーとなるかもしれません。

No.227_so[1]

続いては段ボールを使った作品について。段ボールで書いた曲線を使った立体の表現があるのですが、客観的に見るとあまり立体的ではないかもしれません…。

上の作品で言うと、真ん中少し左の四角いパーツがそうです。この書き方はかなり革新的ではないかと勝手に思っていましたが、残念ながらそうでもなかったようですね。

91b_niku[8]

立体感ということであれば、濃墨と淡墨を使うと上手く表現できるかもしれません。もしも平面に立体を表現できれば、これは絶対に展覧会で勝てるのではないでしょうか(笑)

上の作品は下の方が少し立体的…な気がします。1本の線で濃墨と淡墨を1度に表現しようと思うと、筆への墨の含ませ方が重要となりますね。この辺りは水墨画っぽい技術が必要です。

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最後に、縦線ばっかりや横線ばっかりは面白くないです。これもうたたねこの初期の作品によくあったのですが、客観的に見るとよく分かりますね。基本的には面白くありません。

どうしてもやりたいなら、なぜ同じ線ばかりになるのかを万人が分かるように説明する必要があります。その上で、線の方向は同じでも線質や墨量は変えなくてはいけません。

⑥流行りの造形とうたたねこの作品


No.194b_himozi[5]
No.239_sai[2]
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最後に今年の飛雲展の感想まとめ。話が前後しますが、もう1度造形の話に戻ります。長々と語ってきましたが、今年の展覧会は見たことある作品が多数あるように感じました。

ここでいう見たことあるとは、ブログで書いたことがある作品が多数ということ。自分で書いたことがある造形の作品がたくさんあるのに、なぜ自分の作品にそれを活かせていないのか…。

この原因はもう分かっていて、普段の作品制作と展覧会用の作品制作を別物と考えすぎなのです。普段の課題作品やブログ用の作品で学んだことを、本番である展覧会に役立てられていません。

実際、ここ最近の普段の課題作品の評価はすこぶる良いのです。特に段ボールを使った作品はかなりの高評価。来年の展覧会の作品は段ボールで書いてみましょうかね…。

最後に気になったこと。見たことがある作品の中に、本当にこのブログで紹介した作品に似ている作品が1つありました。もしかするとネタを盗まれたのかもしれません。

前の記事の最後にそんな話をしましたが、ネタを盗むのは大歓迎です。本当にいたら嬉しいなと思う一方で、自分がそれを活かせなかったのが情けないなと感じました…。

ということで、とても長くなりましたが「墨象作品の作り方。【流行りと客観的視点】」でした。最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

では。次の更新は11月1日の予定です。




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